渦流探傷検査はJIS Z 2316 で以下のように説明されております。
試験体に生じる渦電流の変化を利用して,きず,厚さ,形状,材質などを評価する試験方法。
渦電流試験は,導体中の電流の誘導を基本としている。測定量及び解析量は,誘導電流の分布に関する。交流で励磁することから,測定量は複素平面内のベクトル量で示す。
材料の深さ方向の渦電流の分布は,物理法則に支配され,電流の密度は深さの増加に伴って,著しく減少する。その減少の仕方は,深さの指数関数で表す。
(以上、JIS Z 2316より)
実用面の特徴として以下が挙げられます。
ECTの原理 |
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導体にコイルを置いて交流を流すと導体中に渦(うず)電流が流れる。 材料の性質や欠陥の有無によってうず電流が変化することを検出する。 |
探傷原理 |
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探傷方法 | ||
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貫通式 | 回転式 | プローブ式 |
漏洩磁束探傷試験の原理は、JIS Z 2319 改正原案で以下のように説明されております。
強磁性体の試験体を磁化器によって磁化し、試験体にきずなどの不連続部が存在すると、磁束が試験体外部に漏洩する。漏洩磁束探傷試験方法は、このきずから漏洩する磁束の分布及び強度を磁気センサで測定し、きずを検出するものである。漏洩磁束探傷試験方法は、磁気センサが試験体に非接触で、かつ高速の試験が可能となるため、鋼材などの製造ライン中での検査、機械部品の検査、ワイヤーロープなどの保守検査に適する非破壊試験方法である。
(以上JIS Z 2319 改定原案より)
導電率の影響を受けないことを除くと、測定に影響する項目、長所及び実用面の特徴のいずれも、渦流探傷試験と大きな差異はありません。
但し、材料を磁化して探傷するため、非磁性材への適用は出来ません。
測定に影響する項目としては以下が挙げられます。
他の検査方法と比較して長所は以下となります。
実用面では渦流探傷検査と同様の特徴を持ちます。
探傷原理 |
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励磁ヨークにより磁性体を磁化する。きずが存在する際にきず部から漏洩した磁束をセンサーやコイルで検出する。 |
探傷方法 | |
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回転型 | スキャン型 |
渦流探傷(ECT)と漏洩磁束探傷(MLFT)の違いと特徴をその他の表面きず検査方法と合わせて比較したものを下表に示します。
EDDIOの探傷方法 | その他探傷方法 | |||
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渦流探傷 | 漏洩磁束探傷 | 磁粉探傷 | 浸透探傷 | |
原理 | 電磁誘導を利用し、渦電流の乱れをセンサー(コイル)で検出 | 対象物を磁化し、きず部から漏洩する磁束をセンサーで検出 | 対象物を磁化し、きず部から漏洩する磁束に磁粉を付着させ、目視で観察 | 浸透液を散布し、きず部の毛細管現象による浸出付着を目視で観察 |
目視検査 | △(一部可能) | × | ◎ | ◎ |
自動検査 | ◎ | ◎ | ×(一部で自動化例あり) | × |
検査準備 | 不要 | 不要 | ほぼ不要 | 必要(洗浄、現像等必要) |
人的依存(熟練) | なし | なし | あり | あり |
検査速度 | 高速 | 高速 | 低速目視検査のため時間を要す | 超低速目視検査+検査準備に時間を要す |
きずの方向性影響 | ありプローブがきずを直交すること | あり磁力線がきずを直交すること | あり磁力線がきずを直交すること | なし |
検査結果の保存、利用 | きず信号が電気信号として得られるため、デジタルデータとして、データ蓄積、データ加工が容易 | きず信号が電気信号として得られるため、デジタルデータとして、データ蓄積、データ加工が容易 | 検査結果の保存が行えず、スケッチや写真撮影が必要 | 検査結果の保存が行えず、スケッチや写真撮影が必要 |
維持管理 | 標準テストピースによる定期的な性能確認が必要 | 標準テストピースによる定期的な性能確認が必要 | 磁粉(液)の汚れ、濃度管理が必要。検査員の健康状態管理も必要 | 充分に習熟が必要な検査方法であり、検査員のスキル管理が必要 |